2019年7月21日、先月オープンしたばかりのAND COFFEE ROASTERSの新店舗「PARK SIDE COFFEE & TEA」にて、カッピングイベントを開催いたしました。
今回開催したのは、イエメンのスペシャルティコーヒーに特化した「Mocha Origins」の代表、タレックさんとジャマールさんをお招きしてのイエメン産コーヒーのカッピング体験スペシャルコラボレーションイベント。
「イエメンの珈琲の素晴らしさを世界中に伝え、フェアトレードを通じて社会貢献をしていきたい」と日本を拠点に活動する彼らの活動理念に強く共感、熊本にも深いコーヒー文化が根付いていってくれることを願って、今回のコラボレーションが実現しました。
普段、手軽に味わえる身近なコーヒー。でもその一杯がどう生み出されているのかを知る人はほとんどいません。
今回はイエメン産コーヒーの“カッピング”を通じて、カフェを経営されている方、コーヒーのロースターの方、バリスタやロースターの方、フェアトレードに興味が ある方のみならず、コーヒーが好きな24名が集まりコーヒーの世界を深く学び、体験できる2時間となりました。
-イエメン産スペシャルティーコーヒー専門商社 Mocha Origins-
まずはMocha Originsさんの活動の紹介と、そこからイエメンのコーヒー農園についてのプレゼンテーションを代表のタレックさんに行っていただきました。
-イエメンのコーヒー農園-
イエメンは、中東のアラビア半島南端部に位置する広さ55.5万平方キロメートル(日本の約1.5倍弱)・人口約2,900万人の国。歴史上、初めて珈琲の輸出が始まったとして知られるイエメンのモカ港がある国でもあります。伝統と独自の風土で育まれたイエメンコーヒーは、アメリカなどの主要国で最高ランクに格付けされており、コーヒー豆は石油に次ぐ重要な輸出品目の1つで、国を代表する産業となっています。
コーヒー豆栽培に適した土壌と伝統の製法で収穫されたイエメンのコーヒー豆は風味が豊かで、程よい酸味が特徴。イエメン人たちは、毎朝コーヒーの匂いで目を覚まし、甘いデーツと共に楽しんでいるそうです。
-イエメンのコーヒー農園が抱える課題-
イエメンのコーヒー農業における大きな社会課題は二つ、「紛争」と「カート」と呼ばれる幻覚作用のある植物であるといいます。
イエメンのコーヒー農家にとって、大事な収入源となるはずのコーヒー豆の輸出。しかし紛争や内戦による空爆が原因となり各地で道路が寸断され、迂回経路をとらないと港にたどり着くことができなくなったり、さらにその経路の途中にある武装勢力の検問所では危険が伴うとともに高いコストを要求されるなどコーヒー豆の売り上げから利益をあげることが困難になってきているのが農家にとって非常に重大な問題になっているそうです。
そして利益のあがらないコーヒー豆を栽培することをやめ、より栽培が簡単で利益も確保できる「カート」の栽培へとやむなく移行するコーヒー農家も増えてしまっており、「カート」の幻覚作用による問題のみならず大量の水資源の消費や農地の汚染などの問題も合わせてイエメンの社会問題となっています。
-スペシャルティコーヒーでイエメンを救う-
そこで注目したのが “スペシャルティコーヒー”。スペシャルティコーヒーは【 From seed to CUP 】、つまりコーヒーの生産されている土地・生産者の品質から収穫後の生産処理、買い付け、流通ルート、焙煎、抽出してお客様に届くまでの一連の品質がプロフェッショナルにより管理されている特別なコーヒーのことを呼びます。
その品質から、高額で取り扱われることが多いスペシャルティコーヒー。また品質に対して適切な対価を支払うために農場と直接取引きを行っている場合が多く、通常のコーヒーよりも農家に多く利益が還元されるということになります。
タレックさんたちは、この点に注目。イエメンのスペシャルティコーヒーを世界に広めていくことで、イエメンのコーヒー農家の抱える社会問題を解決できるのではと現在の活動をはじめられたということです。
-12種類のイエメンコーヒーのカッピング体験-
◆“カッピング”とは?
コーヒーの味や品質を評価する独自のテイスティング方法を「カッピング」と呼び、この手法は世界でも共通のコーヒーの味の評価方法となっています。カッピングはコーヒーの味を学びたい、味覚を鍛えたいという方にとってもオススメ。今回は12種類のコーヒー豆をご用意しました。
まずは豆を挽いただけの状態で、それぞれの種類をカップに入れ、その香りを比較しながら楽しんでいきます。初めてカッピングを体験される方などは、この時点でその香りの違いにみなさん大変驚かれていました。
ひととおり香りを楽しんだら、そのカップにお熱湯をそのまま注ぎ、タイマーをスタート。カッピングではコーヒーの味と品質を一定に評価するため、抽出方法は味に差のでるドリップではなく、直接お湯を注ぐというもっともシンプルな抽出方法を使います。それにより、淹れる人による味の差をなくし、さらに同時にたくさんの種類を正確に評価できます。
そこから4分待って、浮かんでいる豆を沈めるように攪拌。
浮かんだ泡を丁寧に取り除き、深めのスプーンですくって口に含み、また水でゆすいでペーパーで水気を切ってまた次のカップへ。
最初はひとりひとり静かに集中して香りと味に集中していたみなさんでしたが、2杯目を口に含んだあたりから、その香り高い風味や違いへの驚きで自然と周りの方と話が弾み、カッピングが進むごとにテーブル内での笑顔の交流が増えていくのが目に見えて感じられました。
そしてその評価もさまざま。カッピング終了後にはみなさまにどのコーヒーが気に入ったかアンケートをとりましたが、見事にわかれ、それぞれの方が“自分のお気に入りの一杯”を見つけてくださったことが嬉しかったです。
-日々の暮らしの中で、私たちが一杯のコーヒーで出来ること-
今回は“カッピング”を通じて、普段は意識を向けることのない目の前の一杯のコーヒーのその先にあるイエメンのコーヒー農家の方々の暮らしのことや、コーヒーそれ自身の持つ無限の可能性を感じるきっかけを感じた2時間となりました。
“社会問題に取り組む”と言うと、もしかしたら敬遠される方もいらっしゃるかもしれません。それでも、私たちの日々の暮らしは、この世界中の人々にどこか繋がっているということを時々思い出して、なんとなくではなく、自分の意思を持って行動を選ぶことがひとつずつできるようになっていけると、きっと私たちの暮らしも変わっていくのではないかなと思いました。
“美味しいコーヒーを飲む”
このたったひとつのシンプルなことを追求してみるだけで、日々の暮らしが豊かなものへと変わっていけるのかもしれません。
タレックさん、ジャマールさん、貴重な機会をありがとうございました!